たった1人で演劇創りを始める方法

劇団に所属せず、周りに仲間もいない状態から、自分だけの演劇作品を上演するまで

たった1人で演劇を創ることのメリットとは?

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みなさんこんにちは。息吹肇です。

前回の記事はお読みいただけましたでしょうか。

何故僕が「演劇ユニット」という、劇団ではない形態で演劇活動を行っているのかがお分かりいただけたかと思います。ただ、演劇ユニットは1人である必要はありません。事実、代表(主宰)と数名の役者やスタッフが所属し、公演の度に外部から客演を呼んでいるユニットもあります。

僕の演劇ユニットFavorite Banana Indiansも、実は他にメンバーが1名または2名いた時期もありました。それが、様々な事情から抜けて、現状は1人になったのです。1人の演劇ユニットというのは、実は結構存在しています。中には、「自分はたった1人で、苦労しながら頑張っているんだ!」と声高に訴えることで、支持(同情?)を得ようとする人もいるのですが、1人で頑張っている人はそれ程珍しくはありません。それに、不可抗力でそうなったとしても、それは結局その人個人が選択したことです。(勿論、その人を応援するのは自由です。)

確かに1人で演劇をやろうとすると、いろいろな苦労をすることになります。けれども、楽しさややり甲斐も大きいのです。

 

ブログ2回目の今回は、たった1人で演劇を創ることのメリットをお伝えしましょう。

 

 

メリットその1 意志決定が早い(フットワークが軽い)

通常、劇団には意志決定機関として「劇団会議」というものがあります。これは、劇団員全員が集まり、今後の活動計画等を決めていくものです。叩き台は劇団の代表(主宰)や執行部が作るのでしょう。それを全員参加の会議でもんで、最終的な意志決定がなされます。

これが演劇ユニット、それもたった1人のユニットだったら、まさに「即断即決」です。案を考えるのも自分なら、それにGOを出すなり、修正を加えるなり、待ったをかけたりするのも自分。つまり、自分1人の中で全てが完結してしまうのです!公演を打つ時期、その規模、演目、キャスティング、本番までのスケジュール、稽古場の場所、予算組み等々、全て自分1人で考え、決断します。そして、すぐに動き始めることができるのです。

また、何か不測の事態が起きた時や、予想外の問題が持ち上がった時、劇団ならば方向転換のための意思統一のプロセスを踏む必要があります。しかし、自分が代表なら、その必要も基本的にはありません。すぐに方向転換をするなり、正面突破を図るなり、自分1人の意思で動けます。

自分のペースで、自分の思い描いた通りに物事を動かすことができるのが、1人で演劇を創る最大のメリットといえるでしょう。

 

 

メリットその2 自分の企画が確実に通る

劇団によって違いはあると思いますが、例えば新人の劇団員(または研究生など)が、次の公演の時期や演目を提案することは、まずできないのではないかと思います。もしできたとしても、もっと古株の劇団員や、最終的には代表(主宰)の意見が通るのが普通です。「若手公演」や研究生の自主公演のようなものでなければ、経験の浅い劇団員の企画で公演を打つことは難しいでしょう。

しかし、先に書いたこととも重なりますが、たった1人の演劇ユニットなら、自分の企画を立案できれば、それを確実に実行に移すことができます。自分の企画を実現させるためのプロセスを考えることや、俳優さん、スタッフさんの人選や交渉も自分1人でやらなくてはなりませんが、途中でどこかから横槍が入るということもありません。全責任は自分で取らなくてはなりませんが、劇団のような団体ではとれないリスクをとった企画や、奇抜すぎたり尖りすぎて誰も採用しないような企画でも、自分で何とかする覚悟さえできれば、実行に移すことができます。

分かりやすい例は、ユニット名を決めることでしょうか。

劇団では、会議を開いて団員から案を募り、多数決または代表の意思で決定します。自分が望んでいた劇団名になる保証はありません。どんなにダサいと感じる名前でも、劇団会議で決まってしまえば、それに従うしかありません。

1人ユニットの場合は、案を考えるのは大変ですが、自分1人の意思で、自分の好きな名前をつけて活動することができるのです。

 

メリットその3 人間関係に過度に時間と労力を割かなくてよい

劇作家で演出家の鴻上尚史氏は、ご自身も劇団の主宰をなさっていた経験から、劇団の代表は、劇団の人間関係に80%の労力を割かれると仰っていました。本来は、作品作りに100%とはいかないまでも、それこそ80%の時間と労力を割きたいところです。しかし、現実は全く逆です。

劇団は、同じ人間と月単位・年単位で顔を合わせ続け、芝居作りという共同作業をし続けます。当然、人間関係は濃くなります。その結果、様々な軋轢や行き違いが生まれます。これはどんな組織でも同じでしょう。人間関係がぎくしゃくしてしまうと、物事もうまく進みません。時には、作品の出来(クオリティ・完成度)にまで悪影響を及ぼします。代表(主宰)の大切な役目は、そういった人間関係の調整です。これはもの凄く神経を使いますし、間違いなく消耗します。

たった1人のユニットの場合、稽古中や公演期間中は、やはり固定メンバーとなります。当然同じ問題は生まれます。ただ、1人ユニットのいいところは、公演が終われば、そのメンバーとは基本的には二度と顔を合わせないことです。つまり、毎回人間関係がリセットされていきます。お互い「合わないな」と思っても、大人ならば「まあいっか、この芝居が終わるまでだ」「これは仕事なんだ」と自分を納得させ、我慢して、何とかやり過ごすことができます。

若干人間関係がビジネスライクになりますが、大切なことは皆が仲良しになることではなく(勿論、そうなったら最高なのですが)、作品が完成すること、舞台が成功することなのです。そのために注ぐエネルギーをより増やすことができる。誰にとっても、こんなに幸せなことはないと思うのです。

 

 

如何でしたか。細かい点を挙げれば、まだまだメリットはありますが、

 

1人であることの身軽さ。

 

自分の意見が(基本)100%通る。

 

まとめると、この2つに集約されるといえるでしょう。

意志が強く、自他共に認める「一匹狼」だという自覚があるのなら、無理して仲間を探すよりも、1人で計画を立てて実行する方式を選ぶ方が、より確実に目標に近付けると思います。

 

勿論、たった1人で演劇を創ることを選べば、バラ色の日々だけが待っているわけではありません。

次回は、デメリット、注意しなければならない点についてお伝えしたいと思います。