たった1人で演劇創りを始める方法

劇団に所属せず、周りに仲間もいない状態から、自分だけの演劇作品を上演するまで

自分のやりたいことをはっきりさせて、「仲間」や「理解者」を見つけよう

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みなさん、こんにちは。

脚本家・演出家・ライターの息吹肇です。

前回、前々回の記事はお読みいただきましたでしょうか。

「メリット」を取り上げた記事より、「デメリット」を取り上げた記事の方が、アクセス数は格段に少なかったです。デメリットに関しては「そんなこと、言われる前にとっくに知ってるよ」ということだったのでしょうか。それとも「そんなネガティブな記事は読みたくない。希望が欲しい」ということだったのでしょうか。はたまた、メリットに関する記事を読んでいただいて、「よし、自分はもう1人でやっていける。これ以上このブログを読まなくてもいい」となったのでしょうか。

いずれにしても、前回の最後にも書きましたが、バランス感覚と、自分を客観的に見る視点を持つことは必要です。

その上で、たった1人で演劇を作るには、具体的には何が大切になってくるのか、これから書いていきたいと思います。

そうです、やっとこれからが本編なのです。

 

 

作・演出ができなくても大丈夫

そもそもこれを読んでいるあなたは、何故王道である劇団ではなく、1人で演劇を創ることを選ぼうとしているのでしょうか。

きっとそれは、このブログの第1回目でも少し書いたように、

 

誰よりも、面白いと思うこと(企画・脚本等)を持っていて、それをそのまま表現したい=お客様にお見せしたい

 

という思いを強く持っているからでしょう。

それとも、何人かの人間関係が濃密な団体では居心地が悪い、でも演劇は創りたいというジレンマがあるからでしょうか。

 

ところで、あなたが演劇においてできることは何でしょうか?

演じること?

脚本を書くこと?

演出すること?

衣裳を作ること?

プロデューサー?

あなたは、あなたの持っているスキルを使って、あなたにしか創れない芝居を創る。それが、「たった1人で演劇を創る」ということです。

多くの1人演劇ユニットは、作・演出の人がやっています。(僕もそうです。)では、脚本が書けなければ、演出ができなければ、1人で演劇を創ることは無理なのでしょうか?

いえいえ、そんなことはありません。

僕の知っている人で、脚本家でも演出家でも俳優でも他のスタッフでもなく、たった1人で演劇を創り上げた人がいます。なんとその人は、観劇が趣味の人、つまり、「お客様」なのです。芝居好きが高じて、自前の資金で演劇制作会社を立ち上げ、自分が好きな漫画の舞台化、そう、今流行の2.5次元の舞台を制作するまでになったのです。これを書いている時点では、間もなく実際に上演されることになっています。

この人にあったのは、1つは「資金力」ですが、それ以上に大きいのは「何としても自分が見たい演劇を、自分の力で創り上げたい」という強い意志です。その力に突き動かされて行動した結果、脚本家・演出家・俳優・スタッフが集まり、まさに目的に辿り着こうとしています。

作・演出ができれば、確かに自分の思い描いた世界を直接的に表現できます。しかし、もしそれができなくても、やりたいことやコンセプトさえしっかり持っていれば、それに合う脚本家や演出家を探して来ればいいのです。今の人の例は若干特殊ですが、例えば俳優1人のユニット、演出家1人のユニット等も存在します。演劇を創るのに足りない力は、外から呼んでくればいいのです。

 

 

「仲間」や「理解者」を見つける

たった1人で演劇を創る場合にも、客観的な視点が大事だと書きました。また、先述の通り、自分の足りないところは、他から人を見つけてくる必要があります。

普通に「お仕事」としてギャラを貰い、動いてくれる人も勿論大切です。

ただ、よりベターなのは、「お仕事」の範囲を超えて、あなたを支えてくれる「仲間」や「理解者」がそばにいることです。必ずしもユニットのメンバーでなくても構いません。

あなたがやっていることに共感し、共鳴し、全面的に一緒にはやれないけれど、様々な部分でサポートをしてくれる。それも、「ギャラ」という対価以上の範囲で力を貸してくれる。そんな人がいれば、最終的な方向性の決定や責任を取るのは代表であるあなたであっても、本当に独りぽっちの時よりも、物理的にも精神的にもずっと楽になります。

「メンバー」という形式や身分にこだわらなければ、気軽に力を貸してくれる人は意外と周りに集まってくるものです。

ただし、それには、あなた自身や、あなたの活動や作品に、人を惹き付ける何らかの魅力があることが必要です。また、それを発信していく力やツールが不可欠になります。

 

 

SNSやブログを活用する

今の時代には当たり前のことですが、自分の活動や作品、考え方等を広く発信するツールは、何といってもSNSでしょう。TwitterFacebook、画像・映像が得意ならインスタやTikTokは大きな武器になります。

しかし、世の中はあらゆる情報で溢れています。まだ知名度のない人であれば、Twitterのフォロワーを獲得するのも一苦労です。スルーされてしまう投稿や書き込みの方が多いと考えた方がいいでしょう。それでも根気強く発信していると、アンテナに引っかけてくれる人は必ず出てきます。ハッシュタグによる検索や、グーグルの検索に引っかかるような投稿やブログの記事を書ければ、意外に早いペースでフォロワーが増えたりもします。

実際に公演をやることになれば、出演者やスタッフもSNSをやっている確率は高いので、その人達と相互フォローし合うことで、繋がりが広がっていくのです。

大切なのは、ここでも以下のことです。

 

自分は何がしたいのか、何をしようとしているのか、コンセプトや方向性をしっかり持つ

 

それを他人にはっきりと分かりやすくプレゼンできる

 

これらがしっかりできていれば、それに興味を持つ人や、方向性が同じ人が繋がってくれます。

もしフォロワーができたら、いえ、必ずしも相手が自分をフォローしていなくてもいいのですが、その中から「この人に力になってもらいたい」と思える人に、自分からコンタクトをとってみましょう。これだけたくさんの人がSNSを使っているのですから、全員から無視されることの方が、むしろ考えにくいでしょう。

そして、そういう人達の中から、「仲間」や「理解者」が現れるのです。

 

先に書いた、観客からたった1人で演劇の創り手になった人の場合は、自分が見に行った複数の芝居のチラシに書かれていた1人の演劇プロデューサー(女性)に目を止め、SNSで連絡を取って繋がりました。そして、その女性が実際の公演のための自分の人脈(出演者・スタッフ)を使って、1つの芝居を創りあげたのです。

「所詮自分はお客だから」「業界のことは何も分からないから」と手をこまねいていたら、絶対に得られなかった結果です。

その女性プロデューサーは「仕事」としてこの話を受けて動いたのですが、それでも「ビジネスパートナー」であることに変わりはありません。この2人は既に何作かの舞台を共同で創っています。つまり、そのお客だった人は、演劇を創る「仲間」を獲得したことになるのです。

 

僕にも、SNSを通じて知り合った「理解者」の人達がいます。

その人達がいなければ、今の僕の活動はなかったでしょう。このブログの第1回目を読んでいただくと、それが分かると思います。諸事情で今は離れてしまった人もいますが、そういう人達にも僕は心から感謝しています。

 

 

如何でしたか。

メリット・デメリットを踏まえて、それでも1人で演劇創りをやってみようと思ったら、

 

自分に何がどこまでできるのかを見極める

 

「仲間」や「理解者」を見つけるために、SNS等を使って自分から動く

 

この2つがまずは必要です。

能動的に動くことで、流れを引き寄せることができますし、思いもかけないような人と繋がることもできます。

最初は勇気がいるかも知れませんが、自分を信じて動いてみましょう。

言い古されたことですが、チャンスには前髪しかないのですから。

 

次回からは、さらに具体的に、1人でやる場合の演劇創りの手順や方法をお伝えしていこうと思います。