たった1人で演劇創りを始める方法

劇団に所属せず、周りに仲間もいない状態から、自分だけの演劇作品を上演するまで

企画書を作る

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(写真 宮本よしひさ)

皆さんこんにちは。劇作家・演出家の息吹肇です。

とある読者の方から、紹介の肩書きが「脚本家」から「劇作家」に変わっていますね、というご指摘を受けました。確かにそうですね(笑)

本人は、あまり意識的に使い分けているつもりはないのですが、「劇作家」の方が少し重く感じますね。まあ、やっていることは同じなので、どちらでもいいのですが。

 

さて、今回はいよいよ「企画書」の書き方です。だいぶお待たせしてしまいましたが、これを書かないと、役者に出演のオファーをすることはできません。とはいえ、企画書の書き方は人によって違います。これもあくまでも一例ということで参考にして下さい。

 

 

作成はパワーポイントで

僕はずっと以前に、とある制作会社の方から、企画書の書き方を教わりました。その時は、Wordを使ってかなり事細かく文章で説明するようなやり方でした。それでずっと通してきたのですが、一昨年にとある若手のキャスティングの方から「読みにくい」と言われてしまいました。文字が多すぎて、何が肝心な情報なのか分からないということだったようです。それで、その人に例として見せられたのが、パワポで作ったファイルでした。

確かに、企画書はプレゼンテーションの大元みたいなものなので、パワポで作るのは的を射ています。(もしあなたがMacユーザーで、パワポを持っていない場合は、キーノートでも大丈夫です。)芸能事務所のマネージャーさんは、たくさん送られてくる企画書に目を通すわけですから、ぱっと見て全体が把握できるものの方が有利です。A4横書きで、一般的なテンプレに基づいてデータを作成し、メールに添付して送るのが普通です。ファイルの形式は、OSやソフトの有無に関係なく開けるPDFで保存するとよいでしょう。

 

 

入れる要素

①ユニット名、公演(作品)タイトル

当然最初のページ(表紙)にはこれを載せます。作家・演出家の名前も入れます。ここにあなたのユニットのロゴが入ると素敵です。

 

②概要

上演作品の概要を箇条書きで載せます。詳しいあらすじは不要です。作品の特徴やアピールポイントを書きましょう。

 

③ユニットの作品の特徴

あなたのユニットが創ろうとしている舞台の特徴を、箇条書きで書きましょう。3つくらい、多くても5つにしましょう。分かりやすく、インパクトのある内容(文)が望ましいです。

 

④ユニットの沿革・概要

あなたのユニットの紹介です。初対面の方に自分を紹介するつもりで、ここは少し詳しく書いてもいいでしょう。

あなた個人についてと、ユニット自体のことを分けて書くと分かりやすいです。といっても、初めての公演であれば、書くべきことがないと思われるかも知れません。そういう時は、自分と演劇の関わり合いのきっかけや、こんなユニットにしていきたいという目標を書いても構いません。

相手は、あなたが何者か、自分または自分がマネジメントする俳優を託して大丈夫な相手なのかを知りたいのですから、それに答えるつもりで書くといいでしょう。アピールポイントがあれば、どんどん前面に押し出して下さい。

 

⑤公演の詳細

いよいよ、公演そのものの詳細な情報です。

以下のような項目を入れます。

 

・作品タイトル

・上演場所(および会場のキャパ)、会場WebサイトのURL

・公演期間(決まっていれば、上演スケジュール・ステージ数)

・動員目標人数(なくても構いません。)

・チケットの種類・料金

・キャスト数(男女別の人数)

 

※この段階では、上演スケジュールやチケット関係は、予定でも構いません。

 

⑥物販グッズの内容

物販を行う場合は、種類と予価を書きます。一定の割合を役者にバックする場合、そのパーセンテージが決まっていれば書きます。

この段階では、物販の種類や価格は、予定でも構いません。

(物販を行わない場合は、このページは不要です。)

 

新型コロナウイルス対策の内容

これを書いている2021年1月現在、新型コロナウイルスの感染が全国に広がっています。国や地方自治体が劇場等イベントスペースでの感染症対策のガイドラインを発表していますので、その内容や、稽古場での対策等を明記します。

(既にコロナが収束している場合は、このページは不要です。)

 

⑧稽古スケジュール

仮でも構いませんので、稽古開始日や、週何回か、開始時間と終了時間、稽古場はどのあたりかを書きます。

また、一緒に小屋入り後の想定されるスケジュール(場当たり、ゲネの日等)も入れておきましょう。あくまでも予定、目安ということでいいと思います。この部分がもし分からなければ、決まっていたら舞台監督さんに聞いてみて下さい。通常は、小屋入り初日は仕込み(セットの建て込みや音響・照明のセッティングやチェック等)、2日目は1日場当たり、3日目の昼間にゲネで夜が本番の1回目になります。(仕込み日が1日しかない場合は、スケジュールが変わります。)

 

 

如何でしたか。

とにかく、ぱっと見て分かりやすいことと、ある程度インパクトがあることが重要です。使えるところには写真やイラストを入れて、アクセントを付けるとなおいいと思います。また、必要に応じて、各項目の但し書き、注意点(例えば、「稽古のNGは予めお知らせ下さい。」等)を入れると親切です。

実際にこれをプロジェクターに映し出してプレゼンをするつもりで作って下さい。

最後までできあがったら、何度か見直しをしてみて下さい。足りなかった所や、余分な所があると思いますので、それを修正して、完成版ができたと思ったら送るようにしましょう。

企画書がないと、先方も何を基準にして出演する、しないを決めたらいいのか分かりません。つまり、企画書は全ての始まりの第一歩です。

これさえ完成させれば、あとは攻めるののみです。

 

次回は、この企画書を元に、どのように役者やスタッフを集めるかの話に入りたいと思います。