たった1人で演劇創りを始める方法

劇団に所属せず、周りに仲間もいない状態から、自分だけの演劇作品を上演するまで

キャスト(出演者)を集める その2

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皆さんこんにちは。劇作家・演出家の息吹肇です。

たった1人で演劇公演を行うために、実際に舞台で演じてくれる役者を如何にして探すかを前回から書いています。

おさらいですが、主には以下のような方法があります。

 

・一本釣り方式

・オーディション

・コネクション

 

前回は、「一本釣り方式」、つまりはお目当ての役者さんに直接オファーする方法についてでした。今回は、2番目のオーディションを行うやり方についてお伝えしたいと思います。

一口に「オーディション」といっても、人によって、また団体によってやり方は様々です。「ワークショップオーディション」という形式もあります。ここでは、僕が普段やっているやり方に則って説明していきます。これが唯一のやり方ではありませんので、あくまで参考程度に捉えておいて下さい。

 

 

①場所を確保し、日時を確定する

当然ですが、オーディションには会場が必要です。「稽古場を押さえる」ことについて前に書きましたが、それと全く同じ要領で場所を予約して下さい。参加人数によって必要な広さは異なってきますが、普通は場所を押さえた上で募集をかけますので、本来はどの位の人が集まるか分からないと広さも決められないということになります。初めてオーディションを行う場合には、最大で20人位入れる部屋を確保するといいでしょう。

また、オーディションは、2回位に分けて行うのが望ましいです。例えば、平日は時間が取れないが、土日なら参加できるという役者もいます。逆に、平日しか体があかないという人もいます。そのどちらにも対応できるような日程を組みましょう。1回に3時間も押さえておけば、準備や後片付けの時間も余裕で入れられます。(オーディションの内容にもよりますが。)

 

②情報を発信する

日時と場所が決まったら、それを告知します。告知の方法は、Twitter等のSNSを使うやり方と、オーディションサイトに情報を掲載してもらうやり方があります。

オーディションサイトへの掲載は、基本は無料です。代表的なものに「CoRich」の掲示板、「オーディションプラス」「Deview」といったものがあります。このうち、Deviewは、「参加者に金銭的な負担がないこと」を情報掲載の条件にしていますので、ノルマを設定する公演のオーディション情報は載せられません。また、Deviewもオーディションプラスも、独自の掲載基準を持っていますので、情報を送ったからといって、確実に掲載されるわけではありませんので、注意しましょう。CoRichは、登録さえすれば掲示板に自由に情報を載せられます。ただし、前述の2つに比べて、見ている人が多い割には応募してくる人は殆どいません。さらに、Deviewもオーディションプラスも、一定期間を空けないと次の情報が載せられませんので、短期間で追加でオーディションを行う場合には使えません。

また、「18歳以上」「演技経験のある人」「性別不問」等、条件がある場合は、それも明記しましょう。ネタバレにならない程度に作品のあらすじを載せておくと、受ける方がよりイメージしやすくなり、興味を持ってもらえるので効果的です。

 

オーディションを受ける人から送ってもらう情報としては、下記のようなものが考えられます。

 

・名前

・性別

・年齢

・所属

・身長

・スリーサイズ

・芸歴

・特技

・自己PRまたは志望動機

・写真(全身とバストアップ)

 

上記を、メールで送ってもらうのが一般的です。当日、プリントアウトしたものを持参しましょう。

 

③オーディション用の資料(脚本)を用意する

あなたが役者の何を見たいかで、当日用意するものは変わってきます。

演技力を見る最もオーソドックスな方法は、台詞を読んでもらうこと、役を演じてもらうことです。それには、オーディション当日に読んで(演じて)もらう脚本が必要です。といっても、新しく書き下ろす必要はありません。もう既に、上演するための脚本が(第1稿でも)上がっている筈ですから、そこから適切と思われるシーンを抜いて、それを使用すればよいのです。男女の比率やシーンの長さに応じて、どこをチョイスするか決めます。複数のシーンを用意しても構いません。それをプリントアウトして、人数分コピーして持って行きます。

 

☆歌・ダンス等、特別な能力を見たい場合

ミュージカルや音楽劇等では、役によってはダンスや生歌の能力を確認しておきたい場合があります。そんな時は、そのための課題を別途用意する必要があります。

歌の場合は、例えば「得意な歌をワンコーラス歌ってもらう」、または「課題曲を予めデータで送信しておいて、当日歌ってもらう」といった方法が考えられます。ダンスの場合も、これと同じです。課題曲や課題のダンスは、直接作品と関係がなくても大丈夫です。課題を与える場合は遅くともオーディションの10日から1週間前までには送るようにしましょう。

 

④オーディション当日

もし知り合いで手が空いていそうな人がいたら、お手伝いを頼むのもいいでしょう。椅子を並べたり、課題を配ったりと、色々やることはあります。また、その人が役者なら、脚本を演じてもらう時に、オーディションを受ける人の相手役をやってもらうこともできます。

一般的な流れとしては、「役者自己紹介→脚本を使っての演技→歌やダンス(あれば)→質疑応答」ということになります。

一口に「演技を見る」といっても、何を重視するかはあなた自身の判断です。見た目(立ち姿等)なのか、台詞の言い方なのか、作品の色や登場人物の役柄に合っているかなのか、初見の脚本に対しての対応力なのか。

人数が多い場合は、1人に割ける時間が限られますが、少人数だった場合は、例えば1回読んで(演じて)もらった後に、軽く演出をつけて、もう一度やってみてもらうこともできます。役者が、つけた演出をすぐに取り入れて、演技を変えられるかを見ることができます。

 

一通り演じてもらった後の質疑応答の時、

 

「お客さんは何人位呼べますか?」

 

と役者に質問してみて下さい。その役者の動員力を知るためです。

大抵の場合、実際の何割り増しかの数を役者は答えます。例えば、「20人位です」と答えた人は、実際には12、3人、多くて15人位しか呼ばないことが多いです。ただ、参考にはなります。同じ位の演技力や魅力を持っている人が2人いたら、多い数を答えた方を合格にするといった判断基準になるのです。

 

☆ワークショップオーディション

上記のような一般的なオーディションの他に、「ワークショップオーディション」というものを開催する団体やユニットもあります。

これは、オーディションにワークショップ(与えられた様々な課題を参加者全員でこなす、「演劇教室」のようなもの)の要素を加えたもので、役者の演技力だけではなく、性格や協調性といった、演劇作品を作る上で非常に大切な要素を見ることができます。ただし、まとまった時間を必要としますし、開催する方にもかなりの準備や演劇的な素養を求められますので、初回からこれを行うことはお勧めしません。

どうしてもやってみたいと思ったら、まずは他の団体や演出家・監督が主催するワークショップに参加してみることが、一番の早道です。

 

⑤ オーディションの結果発表

役者は、通常同じ期間にいくつもオーディションを受けます。ですので、できるだけ早く結果をお知らせするのが親切です。

複数の日にわたってオーディションを行った場合は、最後のオーディションから概ね1週間以内に、結果をメールで個別に伝えましょう。

この時、合格を知らせた役者から、既に別のオーディションに合格していて、そちらを選ぶので辞退したい旨のお返事をいただくこともあります。縁がなかったと諦めて、気持ちを切り替えて下さい。

 

 

如何でしたか。

オーディションは準備に手間がかかりますが、今まで知らなかった役者と、実際に会って演技を見られます。事前に送られてきた情報では分からなかったことを、生で知ることができる貴重な機会になります。多くの新たな出会いが期待できますし、その中から、その後も長い付き合いになる役者が出てくることもしばしばです。

初めての時は緊張すると思いますが、それは役者も同じことです。是非新たな出会いの場を楽しんで、ご自分の作品の世界を構築するのに最適な人材を発見して下さい。

 

次回は、「コネクション」(コネ)に関してです。

次回も是非お読み下さい。

 

 

※団体・ユニット等の個別のご相談もお受けしております。ご希望の方は、コメントでその旨お知らせ下さい。

 

(写真 松永幸香)