たった1人で演劇創りを始める方法

劇団に所属せず、周りに仲間もいない状態から、自分だけの演劇作品を上演するまで

キャスト(出演者)とスタッフを集める その3

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皆さんこんにちは。劇作家・演出家の息吹肇です。

たった1人で演劇を創るために、その舞台を彩ってくれる役者さんを探す方法の、今回は3回目です。

おさらいですが、出演者(役者)を探す方法には、大きく分けて3つありました。

 

・一本釣り方式

・オーディション

・コネクション

 

前回は、オーディションのやり方をざっとご紹介しました。

今回は、最後の「コネクション」、平たくいえば「コネ」についてです。

コネには、いくつかのルートがあります。

 

①演劇関係者(役者)のコネ

あなたが役者なり脚本家なり演出家なりで、既に演劇人として活動している人であれば、演劇関係者に知り合いや友人が1人や2人はいると思います。当然、出演等何らかの協力をお願いしていると思いますが、その人から知り合いの役者を紹介してもらうのです。オーディションで採った役者に聞くのもありです。また、誰かにオファーして断られてしまった場合でも、「代わりに誰かいい人いない?」と聞いてみましょう。候補がいたら教えてくれるはずです。

実際にその人の演技を見たことがなくても、写真やSNS等最低限の情報が得られるでしょう。良さそうだと思ったら、前にご紹介した「一本釣り」の手法でアタックしてみましょう。その時に、例えば「役者の○○さんから紹介されました」と一言添えると、相手も安心して話を聞いてくれます。

 

②業界関係者のコネ

例えば誰かのツテでインターネットTVやYouTubeの番組に出演することができたりした場合、その局のプロデューサーさんが、業界に顔がきく場合があります。また、役者・タレントの紹介を業務の一つにしている局もあります。そういう時は、名刺を交換して、役者の紹介をお願いしてみましょう。業務の場合は当然マージンを取られますが、普通に繋いでくれる場合もあります。

勿論、一緒に出演した人やMCの人が役者なら、その場でオファーするのもありです(すぐにはお返事はもらえないと思いますが)。「事務所を通して下さい」と言われたら、事務所に連絡してみましょう。

 

③スタッフさんのコネ

スタッフさんが、前に入った現場で仲良くなった役者を紹介してくれることもあります。また、芸能事務所の仕事を引き受けていた関係で、事務所の人と繋がりができているスタッフさんもいて、その方が事務所と繋いでくれる場合もあります。

僕は以前、元AKB48の女優さんに僕の作品に出演していただいたことがあるのですが、彼女の事務所と繋がることができたのは、間にその事務所の仕事をしたことがあるスタッフさんがいてくださったおかげです。

 

 

スタッフさんを探す

これまでは、主に出演者(役者)の探し方を書いてきました。

スタッフさんを1から探す場合も、ほぼ手順は同じです。

見に行った芝居のチラシのスタッフ一覧を見て名前をチェックしたり、ググったりして、SNS等で探して連絡をとる(一本釣り方式)か、役者またはスタッフさんに、知っているスタッフさんを紹介してもらう(コネクション)といった方法が考えられます。

(さすがにスタッフさんのオーディションというものはありません。)

スタッフさんのデータベースのようなものがあるといいのですが、あるようでなかなかないのです。ただ、何人かのスタッフさんが集まって、会社や集団の形で活動している人達もいますので、その団体にオファーすれば、AさんはダメでもBさんはOKといったことはあります。

 

☆スタッフさんの知り合いは多いほどよい

役者との繋がりも大切ですが、芝居は支えて下さるスタッフさんがいなければ創ることはできませんので、できるだけいろいろなスタッフさんと繋がりましょう。

舞台監督・照明・音響…etc.それぞれのセクションにつき、最低2人は繋がりを持っておくと、1人に断られても、すぐにもう1人に連絡をして頼むことができます。

また、経験値の高いスタッフさんであれば、全く違った毛色の舞台にも対応して下さいますので、極端な話、見に行った芝居と真逆のテイストの芝居を創ろうと思っている時でも、そこのスタッフさんに声をかけてみる価値はあります。そうやって、できるだけ関係を広げていく努力をしましょう。

 

 

声をかけるタイミング

役者にしろスタッフさんにしろ、どのタイミングでオファーをしたり、オーディションを行ったりすればいいのでしょうか。

早ければ早いに越したことはありません。ただ、あまりに早過ぎると、特に事務所系の役者の場合は、「その時期のスケジュールはまだ決められない」と言われてしまうことがあります。ただ、あまりに本番や稽古開始日に接近し過ぎると、既に別の案件のスケジュールが入っていることもしばしばです。

経験的にいえば、本番の6〜8ヶ月前位を目安に、声をかけ始めるのがいいと思います。小劇場とはいえ、人気がある人はこれでも遅い位ですが、逆に1年以上前だと、それこそその時期に自分が何をしているか分からないということで、簡単にはOKはもらえません。

スタッフさんの場合は、かなり先でも予定を入れていただけることが殆どです。早め早めに声をかけることを心がけて下さい。

 

 

如何でしたでしょうか。

本当に初めて演劇界に飛び込み、初めて芝居を創ろうとしている人の場合、コネクションはなきに等しいので、ここに書いた方法はなかなか難しいかも知れません。ただ、出演者でもスタッフさんでも、1人でも決まれば、その人のコネを使うことは可能です。一本釣りで厳しい場合は、どんな弱い繋がりでも、コネを有効に使って下さい。

 

次回は、稽古開始までにやるべきことをお伝えする予定です。

次回も是非お読み下さい。

 

 

※団体、ユニットの立ち上げ等の個別のご相談もお受けしております。ご希望の方は、コメントでお知らせ下さい。

 

(写真 松本和幸

キャスト(出演者)を集める その2

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皆さんこんにちは。劇作家・演出家の息吹肇です。

たった1人で演劇公演を行うために、実際に舞台で演じてくれる役者を如何にして探すかを前回から書いています。

おさらいですが、主には以下のような方法があります。

 

・一本釣り方式

・オーディション

・コネクション

 

前回は、「一本釣り方式」、つまりはお目当ての役者さんに直接オファーする方法についてでした。今回は、2番目のオーディションを行うやり方についてお伝えしたいと思います。

一口に「オーディション」といっても、人によって、また団体によってやり方は様々です。「ワークショップオーディション」という形式もあります。ここでは、僕が普段やっているやり方に則って説明していきます。これが唯一のやり方ではありませんので、あくまで参考程度に捉えておいて下さい。

 

 

①場所を確保し、日時を確定する

当然ですが、オーディションには会場が必要です。「稽古場を押さえる」ことについて前に書きましたが、それと全く同じ要領で場所を予約して下さい。参加人数によって必要な広さは異なってきますが、普通は場所を押さえた上で募集をかけますので、本来はどの位の人が集まるか分からないと広さも決められないということになります。初めてオーディションを行う場合には、最大で20人位入れる部屋を確保するといいでしょう。

また、オーディションは、2回位に分けて行うのが望ましいです。例えば、平日は時間が取れないが、土日なら参加できるという役者もいます。逆に、平日しか体があかないという人もいます。そのどちらにも対応できるような日程を組みましょう。1回に3時間も押さえておけば、準備や後片付けの時間も余裕で入れられます。(オーディションの内容にもよりますが。)

 

②情報を発信する

日時と場所が決まったら、それを告知します。告知の方法は、Twitter等のSNSを使うやり方と、オーディションサイトに情報を掲載してもらうやり方があります。

オーディションサイトへの掲載は、基本は無料です。代表的なものに「CoRich」の掲示板、「オーディションプラス」「Deview」といったものがあります。このうち、Deviewは、「参加者に金銭的な負担がないこと」を情報掲載の条件にしていますので、ノルマを設定する公演のオーディション情報は載せられません。また、Deviewもオーディションプラスも、独自の掲載基準を持っていますので、情報を送ったからといって、確実に掲載されるわけではありませんので、注意しましょう。CoRichは、登録さえすれば掲示板に自由に情報を載せられます。ただし、前述の2つに比べて、見ている人が多い割には応募してくる人は殆どいません。さらに、Deviewもオーディションプラスも、一定期間を空けないと次の情報が載せられませんので、短期間で追加でオーディションを行う場合には使えません。

また、「18歳以上」「演技経験のある人」「性別不問」等、条件がある場合は、それも明記しましょう。ネタバレにならない程度に作品のあらすじを載せておくと、受ける方がよりイメージしやすくなり、興味を持ってもらえるので効果的です。

 

オーディションを受ける人から送ってもらう情報としては、下記のようなものが考えられます。

 

・名前

・性別

・年齢

・所属

・身長

・スリーサイズ

・芸歴

・特技

・自己PRまたは志望動機

・写真(全身とバストアップ)

 

上記を、メールで送ってもらうのが一般的です。当日、プリントアウトしたものを持参しましょう。

 

③オーディション用の資料(脚本)を用意する

あなたが役者の何を見たいかで、当日用意するものは変わってきます。

演技力を見る最もオーソドックスな方法は、台詞を読んでもらうこと、役を演じてもらうことです。それには、オーディション当日に読んで(演じて)もらう脚本が必要です。といっても、新しく書き下ろす必要はありません。もう既に、上演するための脚本が(第1稿でも)上がっている筈ですから、そこから適切と思われるシーンを抜いて、それを使用すればよいのです。男女の比率やシーンの長さに応じて、どこをチョイスするか決めます。複数のシーンを用意しても構いません。それをプリントアウトして、人数分コピーして持って行きます。

 

☆歌・ダンス等、特別な能力を見たい場合

ミュージカルや音楽劇等では、役によってはダンスや生歌の能力を確認しておきたい場合があります。そんな時は、そのための課題を別途用意する必要があります。

歌の場合は、例えば「得意な歌をワンコーラス歌ってもらう」、または「課題曲を予めデータで送信しておいて、当日歌ってもらう」といった方法が考えられます。ダンスの場合も、これと同じです。課題曲や課題のダンスは、直接作品と関係がなくても大丈夫です。課題を与える場合は遅くともオーディションの10日から1週間前までには送るようにしましょう。

 

④オーディション当日

もし知り合いで手が空いていそうな人がいたら、お手伝いを頼むのもいいでしょう。椅子を並べたり、課題を配ったりと、色々やることはあります。また、その人が役者なら、脚本を演じてもらう時に、オーディションを受ける人の相手役をやってもらうこともできます。

一般的な流れとしては、「役者自己紹介→脚本を使っての演技→歌やダンス(あれば)→質疑応答」ということになります。

一口に「演技を見る」といっても、何を重視するかはあなた自身の判断です。見た目(立ち姿等)なのか、台詞の言い方なのか、作品の色や登場人物の役柄に合っているかなのか、初見の脚本に対しての対応力なのか。

人数が多い場合は、1人に割ける時間が限られますが、少人数だった場合は、例えば1回読んで(演じて)もらった後に、軽く演出をつけて、もう一度やってみてもらうこともできます。役者が、つけた演出をすぐに取り入れて、演技を変えられるかを見ることができます。

 

一通り演じてもらった後の質疑応答の時、

 

「お客さんは何人位呼べますか?」

 

と役者に質問してみて下さい。その役者の動員力を知るためです。

大抵の場合、実際の何割り増しかの数を役者は答えます。例えば、「20人位です」と答えた人は、実際には12、3人、多くて15人位しか呼ばないことが多いです。ただ、参考にはなります。同じ位の演技力や魅力を持っている人が2人いたら、多い数を答えた方を合格にするといった判断基準になるのです。

 

☆ワークショップオーディション

上記のような一般的なオーディションの他に、「ワークショップオーディション」というものを開催する団体やユニットもあります。

これは、オーディションにワークショップ(与えられた様々な課題を参加者全員でこなす、「演劇教室」のようなもの)の要素を加えたもので、役者の演技力だけではなく、性格や協調性といった、演劇作品を作る上で非常に大切な要素を見ることができます。ただし、まとまった時間を必要としますし、開催する方にもかなりの準備や演劇的な素養を求められますので、初回からこれを行うことはお勧めしません。

どうしてもやってみたいと思ったら、まずは他の団体や演出家・監督が主催するワークショップに参加してみることが、一番の早道です。

 

⑤ オーディションの結果発表

役者は、通常同じ期間にいくつもオーディションを受けます。ですので、できるだけ早く結果をお知らせするのが親切です。

複数の日にわたってオーディションを行った場合は、最後のオーディションから概ね1週間以内に、結果をメールで個別に伝えましょう。

この時、合格を知らせた役者から、既に別のオーディションに合格していて、そちらを選ぶので辞退したい旨のお返事をいただくこともあります。縁がなかったと諦めて、気持ちを切り替えて下さい。

 

 

如何でしたか。

オーディションは準備に手間がかかりますが、今まで知らなかった役者と、実際に会って演技を見られます。事前に送られてきた情報では分からなかったことを、生で知ることができる貴重な機会になります。多くの新たな出会いが期待できますし、その中から、その後も長い付き合いになる役者が出てくることもしばしばです。

初めての時は緊張すると思いますが、それは役者も同じことです。是非新たな出会いの場を楽しんで、ご自分の作品の世界を構築するのに最適な人材を発見して下さい。

 

次回は、「コネクション」(コネ)に関してです。

次回も是非お読み下さい。

 

 

※団体・ユニット等の個別のご相談もお受けしております。ご希望の方は、コメントでその旨お知らせ下さい。

 

(写真 松永幸香)

キャスト(出演者)を集める その1

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皆さんこんにちは。劇作家(脚本家)・演出家の息吹肇です。

2月に入りました。このブログも足掛け4ヶ月目になります。遅々として進んでいないようにも見えますが、気が付けば少しずつでも実際の上演に近付いてきました。

今回は、キャストを集める方法について書いていきます。といっても、僕のやり方はごくごくシンプルなものなので、何か特別な「技」があるわけではありません。

大きく分けて、

 

・一本釣り方式

・オーディション

・コネクション

 

上記の3つになります。

順番に説明していきましょう。

 

 

一本釣り方式

①公演チラシを活用する

小劇場の芝居を見に行って、「あの人よかった!」と思える役者さんが、1公演に1人はいると思います(もしいなければ、残念ながらその芝居は、あなたにとっては「ハズレ」です)。その人に声をかけるわけです。

僕はそういう時のために、パンフレットが販売されていたら、必ず買うようにしています。パンフの販売がなければ、簡単な出演者・スタッフ紹介のA4二つ折り位の紙が大体は用意されていますので、それを持ち帰ります。パンフがあれば、演者の名前と顔が一致しますので、まずは気になる人をググってみましょう。大抵、何らかのSNSをやっていますので、例えばツイッターのDMで声をかけます。もしその役者が事務所に所属していても、「お仕事の依頼はこちらから」とメールアドレスを載せている場合が多く、それがない場合でも、事務所のサイトにお問い合わせフォームが必ずあります。そこにオファーのメールを送ります。

 

SNSで見つける

上記と重なりますが、ツイッターやインスタで気になる役者をフォローし、どんな芝居(や映像)に出演しているかを投稿の内容から推測します。自分の求めている役者に少しでも近いと思ったら、迷わず連絡をとってみて下さい。その際、ツイッターであればフォロワー数もチェックしておきましょう。フォロワーが2桁、または3桁でも300以下なら、動員力はあまりないと思って間違いありません。動員はさておき、どうしてもその人に出てもらいたいと思えば、DM等で声をかけてみてもいいでしょう。

時々、ブログはやっているけれど、ツイッターやインスタといったSNSはやっていない役者がいます。そういう人には、なかなか連絡がとりにくいものです。しかし、それは役者側の考え方なので、深追いする必要はありません。

 

③事務所のサイトから見つける

先にも書いたように、事務所に所属する役者は、直接連絡をとることがNGである場合が結構あります。そうなると、事務所経由でオファーするしかありません。その時、お目当ての役者だけではなく、事務所の所属タレント紹介のページを一通り見てみましょう。さらに魅力的な役者が登録されていることがあります。事務所のページには、出演履歴等も載っていますので、それを参考にして、複数の人にオファーするのもありです。AさんはダメでもBさんはOKといったこともよくあります。

 

④メールは誠意を持って、堂々と

初めて直接連絡をとる相手ですから、最初は緊張するかも知れませんが、相手はそういうことには慣れていて、かつ基本的には仕事を待っている身だと思えば、少しは気が楽になるでしょう。過剰に卑屈になる必要はありません。

かといって、強気に出られる立場でもないので、「他の誰でもなく、あなたにこの作品に是非出演して欲しい!」という気持ちが伝わるようにオファーの文章を書きましょう。

メールを送ってから、かなり経った頃に返信が来ることもしばしばです。スルーされてしまう場合も多いですが、根気よく待ってみて下さい。

 

⑤伝えるべきこと

先方がまず確認したいのは、スケジュールです。稽古期間や上演日時、場所を伝えます。そして、スケジュールがOKだったら、企画書と脚本を送って出演を検討してもらいます。

次に相手が重要視するのは、出演条件です。チケットノルマがあるのかないのか、チケットバックなのか、ステージギャラ方式なのか。具体的にはどんなシステムなのか。これはしっかり決めておいていて下さい。なお、出演者ごとに条件を変えるのもありです。

そして、最後に相手が知りたがるのは、自分(もしくは事務所所属の役者)の役どころです。「番手」といって、その人が出演者全体の中でどの位の位置にいるのかを示す指標があるのですが、役者も事務所も非常にこれを気にします。比較的有名な事務所の役者は、この番手が上の方でないと引き受けてくれません。また、そういう人をあまりにも低い番手にキャスティングするのは、失礼に当たります。オファーする時までに、どの人をどの役にしたいのか、仮でもいいのでキャスティングを考えておいて下さい。

 

⑥どのレベルの役者までオファーが可能か?

あなたが生まれて初めて演劇公演を主催するのであれば、誰でも知っているような芸能人・俳優が所属するような芸能事務所にオファーをしても、まずスルーされると思って下さい。まだどこの誰かも全く知られていないような人間のために、十分に有名で仕事も詰まっている俳優・タレントのスケジュールを割く意味はないと判断されるからです。また、よしんばスケジュールが大丈夫だったとしても、その俳優の高額なギャラの支払い能力があなたにあるとは見なされないでしょう。

ですから、初めは有名な事務所へのオファーは避け、SNSに連絡先を載せている役者にターゲットを絞ってみて下さい。

 

☆息吹の場合

僕は、Evernoteで公演毎にノートを作り、作品名・劇場名・公演日程、大体のスケジュールとともに、気になった役者、出て欲しいと思っている役者を、出演者候補として入力しておきます。キャストだけではなく、スタッフさんの候補も入れておくとよいでしょう。交渉結果を「OK」「NG」で入れておくと、次からの参考資料にもなります。

 

 

如何でしたか。

今はSNSがあるお陰で、だいぶ一本釣り=直接オファーがしやすくなりました。勿論、受ける、受けないは先方の役者次第です。特に条件面や、どんな役を想定しているかについて質問がくることが多いので、その時点で決まっているところまででもいいので、答えられるようにして下さい。

まったく無視されてしまうこともあるかと思いますが、その場合は、単に縁がなかったということです。気持ちを切り替えて、別の役者へのオファーに力を注いで下さい。

だめかなと思っても、作品の内容に興味を持ってくれて、何とかスケジュールを調整してもらえることもあります。「ダメ元」でいろいろな役者に当たってみましょう。

 

 

次回は、オーディションを行う場合について書きたいと思います。

次回も是非お読み下さい。

 

 

※団体・ユニットの立ち上げ等の個別のご相談もお受けしております。ご希望の方は、コメントでその旨お知らせ下さい。

 

(写真 宮本よしひさ)

企画書を作る

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(写真 宮本よしひさ)

皆さんこんにちは。劇作家・演出家の息吹肇です。

とある読者の方から、紹介の肩書きが「脚本家」から「劇作家」に変わっていますね、というご指摘を受けました。確かにそうですね(笑)

本人は、あまり意識的に使い分けているつもりはないのですが、「劇作家」の方が少し重く感じますね。まあ、やっていることは同じなので、どちらでもいいのですが。

 

さて、今回はいよいよ「企画書」の書き方です。だいぶお待たせしてしまいましたが、これを書かないと、役者に出演のオファーをすることはできません。とはいえ、企画書の書き方は人によって違います。これもあくまでも一例ということで参考にして下さい。

 

 

作成はパワーポイントで

僕はずっと以前に、とある制作会社の方から、企画書の書き方を教わりました。その時は、Wordを使ってかなり事細かく文章で説明するようなやり方でした。それでずっと通してきたのですが、一昨年にとある若手のキャスティングの方から「読みにくい」と言われてしまいました。文字が多すぎて、何が肝心な情報なのか分からないということだったようです。それで、その人に例として見せられたのが、パワポで作ったファイルでした。

確かに、企画書はプレゼンテーションの大元みたいなものなので、パワポで作るのは的を射ています。(もしあなたがMacユーザーで、パワポを持っていない場合は、キーノートでも大丈夫です。)芸能事務所のマネージャーさんは、たくさん送られてくる企画書に目を通すわけですから、ぱっと見て全体が把握できるものの方が有利です。A4横書きで、一般的なテンプレに基づいてデータを作成し、メールに添付して送るのが普通です。ファイルの形式は、OSやソフトの有無に関係なく開けるPDFで保存するとよいでしょう。

 

 

入れる要素

①ユニット名、公演(作品)タイトル

当然最初のページ(表紙)にはこれを載せます。作家・演出家の名前も入れます。ここにあなたのユニットのロゴが入ると素敵です。

 

②概要

上演作品の概要を箇条書きで載せます。詳しいあらすじは不要です。作品の特徴やアピールポイントを書きましょう。

 

③ユニットの作品の特徴

あなたのユニットが創ろうとしている舞台の特徴を、箇条書きで書きましょう。3つくらい、多くても5つにしましょう。分かりやすく、インパクトのある内容(文)が望ましいです。

 

④ユニットの沿革・概要

あなたのユニットの紹介です。初対面の方に自分を紹介するつもりで、ここは少し詳しく書いてもいいでしょう。

あなた個人についてと、ユニット自体のことを分けて書くと分かりやすいです。といっても、初めての公演であれば、書くべきことがないと思われるかも知れません。そういう時は、自分と演劇の関わり合いのきっかけや、こんなユニットにしていきたいという目標を書いても構いません。

相手は、あなたが何者か、自分または自分がマネジメントする俳優を託して大丈夫な相手なのかを知りたいのですから、それに答えるつもりで書くといいでしょう。アピールポイントがあれば、どんどん前面に押し出して下さい。

 

⑤公演の詳細

いよいよ、公演そのものの詳細な情報です。

以下のような項目を入れます。

 

・作品タイトル

・上演場所(および会場のキャパ)、会場WebサイトのURL

・公演期間(決まっていれば、上演スケジュール・ステージ数)

・動員目標人数(なくても構いません。)

・チケットの種類・料金

・キャスト数(男女別の人数)

 

※この段階では、上演スケジュールやチケット関係は、予定でも構いません。

 

⑥物販グッズの内容

物販を行う場合は、種類と予価を書きます。一定の割合を役者にバックする場合、そのパーセンテージが決まっていれば書きます。

この段階では、物販の種類や価格は、予定でも構いません。

(物販を行わない場合は、このページは不要です。)

 

新型コロナウイルス対策の内容

これを書いている2021年1月現在、新型コロナウイルスの感染が全国に広がっています。国や地方自治体が劇場等イベントスペースでの感染症対策のガイドラインを発表していますので、その内容や、稽古場での対策等を明記します。

(既にコロナが収束している場合は、このページは不要です。)

 

⑧稽古スケジュール

仮でも構いませんので、稽古開始日や、週何回か、開始時間と終了時間、稽古場はどのあたりかを書きます。

また、一緒に小屋入り後の想定されるスケジュール(場当たり、ゲネの日等)も入れておきましょう。あくまでも予定、目安ということでいいと思います。この部分がもし分からなければ、決まっていたら舞台監督さんに聞いてみて下さい。通常は、小屋入り初日は仕込み(セットの建て込みや音響・照明のセッティングやチェック等)、2日目は1日場当たり、3日目の昼間にゲネで夜が本番の1回目になります。(仕込み日が1日しかない場合は、スケジュールが変わります。)

 

 

如何でしたか。

とにかく、ぱっと見て分かりやすいことと、ある程度インパクトがあることが重要です。使えるところには写真やイラストを入れて、アクセントを付けるとなおいいと思います。また、必要に応じて、各項目の但し書き、注意点(例えば、「稽古のNGは予めお知らせ下さい。」等)を入れると親切です。

実際にこれをプロジェクターに映し出してプレゼンをするつもりで作って下さい。

最後までできあがったら、何度か見直しをしてみて下さい。足りなかった所や、余分な所があると思いますので、それを修正して、完成版ができたと思ったら送るようにしましょう。

企画書がないと、先方も何を基準にして出演する、しないを決めたらいいのか分かりません。つまり、企画書は全ての始まりの第一歩です。

これさえ完成させれば、あとは攻めるののみです。

 

次回は、この企画書を元に、どのように役者やスタッフを集めるかの話に入りたいと思います。

名前を決め、公式サイトを立ち上げる

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皆さんこんにちは。劇作家・演出家の息吹肇です。

前回までで、大まかなお金の話は終わりました。それを踏まえた上で、今度は外に発信していく話に移りたいと思います。

前回の終わりに、次回は企画書の書き方について書くとお知らせしました。

しかし、その前にやらなければならない大切なことがいくつかありましたので、今回はそれについてお伝えしようと思います。焦らしているようですみません(笑)

 

 

ユニット名を決める

一番肝心なことを書いていませんでした。これから芝居の公演を行うという時、その主体の名前を決めておかなくてはなりません。

これは、ある意味趣味の領域です。ただ、第三者に最初に出す名詞のようなものですので、それなりの意味や戦略を込めるべきでしょう。会社を立ち上げる時に、企業名を決めるのと同じです。

どんな劇団名、ユニット名があるか、予め調べておきましょう。

 

①印象に残りやすいか

第一印象は非常に大切です。一度聞いただけで耳に残る言葉がいいと思います。「音」も大切ですが、簡単な言葉を用いていながら、聞いた瞬間に「何だろう?」と思わせるようなものですとベストです。「夢の遊民社」「第三舞台」「ナイロン100℃」「阿佐ヶ谷スパイダース」「鹿殺し」「二兎社」「時間制作」「天然ポリエステル」「六番シード」等々、簡単な単語の意外な組み合わせが、人間の脳には強く印象に残ります。

 

②上演する作品の色や方向性を体現しているか

例えば、あなたが演劇で有名になった時、真っ先に聞かれるのはユニット名の由来です。例え音だけで決めたのだとしても、後付けでもいいので理由を説明できるようにした方がいいでしょう。

例えば、「第三舞台」は、

 

まず第一舞台がありまして、それはスタッフとキャストが力を合わせた舞台のこと。第二舞台は観客席。第三舞台は、第一と第二の舞台が共有する幻の舞台。劇団の自己満足に終わらず、お客さんが付き合いで来ているだけでもない、最上の形で共有する舞台

 

上記のような意味で名付けたと、主宰の鴻上尚史氏は旗揚げの時に語っていました。

「なるほど!」と納得しますよね。非常にセンスのいいネーミングだと思いました。この劇団がかなり長い年月にわたって存続できたのは、勿論作品の素晴らしさもあったのですが、この名前の力もあるのではないかと、個人的には思っています。

 

③検索しやすい言葉か

①とも通じるのですが、何でもググるのが普通の現代にあっては、簡単に検索ワードとして入力できる言葉かどうかも、非常に大切になってきます。いきおい、短めの言葉が有利になります。ちなみに、上記のうち「夢の遊民社」の旗揚げ時の正式名称は、「面白くてためになる劇団夢の遊民社」だったそうです。Googleのグの字もない時代ならではの遊び心ですね。

ただ、検索を重視すると、他の団体名とかぶったり、非常に似通った名前になったりする可能性も出てきます。オリジナルだと思っていたものが、既に存在する団体の名前だったりすることもあります。予めよく調べておきましょう。

 

☆「Favorite Banana Indians」の場合

僕の演劇ユニットの名前は、「Favorite Banana Indians」です。1998年に創立しました。この時は、まだGoogleのグの字もない頃で、まだ検索の重要性など頭に全くなくて当然の頃でした。

正直に言って、この名前は音のみで決めたものです。当時いたメンバーと3人で、

 

・英語であること

・略称が、誰でも知っているようなものになること

 

この2つを元に考えた結果が、「Favorite Banana Indians」(略称「FBI」)でした。まだ作品の方向性も何も決まっていない状態で付けたので、こんな冗談のような名称にしてしまったのです。そして、後からこの名称の由来を考えました。以前はサイトに載せていたのですが、内容を見直した時に消してしまいました。また復活させてもいいのかなとも思います。

当初はググってもまったく出てきませんでしたので、名称の変更も考えましたが、代わりの名称も思い付かずに、ここまできてしまいました。活動開始からだいぶ経ったことと、ここ数年は公演のペースも上がってきたことから、今では正式名称を入力すれば、ちゃんと情報が出てくるようになりました。(ただ、正しく入力すること自体が大変ですが。)

 

 

公式サイトを作成する

名刺代わりに、自分のユニットの公式サイトを作成し、公開することも大切です。まだ活動の実績が何もない状態であれば、最低限下記のものは掲載しておきましょう。

 

・ユニット名

・ユニットの説明(活動の方向性等)

・代表者紹介

・次回公演予定(決まっていなければ、見込みでも可)

・連絡先

 

今は無料でWebを作成できるサービスがいくつかありますので、それを使用するのが手っ取り早いと思います。

お金に余裕があって、それでは物足りないと思う人は、デザイナーさんにお願いしてみましょう。Lancersやcoconalaといったスキルシェアサイトで探すか、見に行った芝居のチラシで気に入ったものがあれば、そこに書かれている「宣伝美術」さんに、SNS等で直接連絡をとってみてもいいかも知れません。

また、その場合は、同時にユニットのロゴを作成してもらいましょう。追加料金がかかりますが、小さなロゴならそれ程大きな金額にはなりません。

活動を継続していけば、載せる情報も増えます。謂わばポートフォリオとして活用できるのです。更新作業を自分でするか、デザイナーさんにサイトの運用も任せるかで、かかるお金も変わってきますので、よく検討してみて下さい。

ユニットの公式サイトは、ユニットの「顔」になります。大金を投じる必要はありませんが、後々を考えて、あまりケチらない方がいいと思います。

 

 

名刺を作成する

紙の名刺も作成しておきましょう。最初は100枚もあれば足ります。自分でテンプレに手を加えて作れるサイトもありますし、上記のデザイナーさんに一緒に頼んでも構いません。ロゴが入れば、だいぶそれらしく見えるものです。

初対面のスタッフさんや役者さんと名刺交換をしておけば、活動を継続していく上での財産になります。普通の社会人と同じで、名刺は必須アイテムと考えて下さい。

 

 

如何でしたでしょうか。

企画書の前にこれらをやっておく必要があるのは、企画書には当然ユニットの名前が載り、サイトのURLも載せます。ロゴがあると様になります。ですので、外に向かうための下準備として、現在の自分を表現するものを持っておくことが重要です。

これらを踏まえて、企画書を作っていきましょう。

次回も、どうぞお読み下さい。

 

 

※団体・ユニットの立ち上げ等の個別のご相談もお受けしております。ご希望の方は、コメントでその旨お知らせ下さい。

公演の予算を組む その3

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皆さんこんにちは。劇作家・演出家の息吹肇です。

コロナの感染がなかなか落ち着きませんが、いかがお過ごしでしょうか。

このブログも、今回で10回目となります。お読みいただき、感謝致します。

今回で「予算を組む」も最後になります。今回は、稽古場代と、物販グッズ製作費です。

 

稽古場代

文字通り、稽古をする場所を借りるお金です。

普通考えるのは、ダンスの稽古などにも使用できるスタジオですが、自治体が運営する公共施設(公民館等)も、安くて使いやすいので、多くの団体が利用します。ただし、こういう場所を借りるには、団体登録をする必要があります。通常は、その市区町村に住んでいる人、及びそこで働いている人がメンバーの一定割合以上いないと登録できません。登録してしまえば、こちらの都合のいい曜日や時間帯が空いている施設を探して予約をし、使用します。

使用料は、自治体によって、また施設によって、部屋の広さによってまちまちですが、間違いなく言えるのは、民間が運営するスタジオよりは、かなり格安だということです。僕が使った中で一番安かったのは、朝、昼、夜間のどの時間帯も600円という施設でした。最寄り駅から遠いということもあるのかも知れませんが、比較的空いていて、施設の方も親切で使いやすかったです。

また、公共施設では、演劇の稽古に使える部屋と使えない部屋があります。ただし、かなり柔軟に運用してくれる施設も結構ありますので、あまり心配しなくても大丈夫です。

民間のスタジオは、広さやロケーションによってだいぶ違いますが、夜間の4時間借りて1万2,000円位のところもあれば、同じだけ借りて2万以上する場所もあります。

変わったところでは、「たなか舞台芸術スタジオ」「みらい館大明」のように、廃校の校舎を利用して、比較的廉価で貸している施設もあります。競争率は高いですが、舞台の仮組みができる等、非常にリーズナブルですので、是非利用してみて下さい。たなかの方は、個人名義でも借りることができます。

稽古の回数は、作品の長さ等にもよりますが、概ね20〜25回位と考えて下さい。僕の場合は、平日は3日間で夜間のみ、土日祝日は昼間と夜間、本番1週間前からは「集中稽古」で毎日昼間と夜間というスケジュールでした。これで、一番安い稽古場で払った費用は、約6万〜8万でした。使用料の高いスタジオを使うと、20万位になってしまいます。まったく馬鹿にならない金額ですので、できるだけ安く使える場所と、団体登録に協力してくれる人を探しましょう。

 

物販グッズ製作費

例えば元アイドルの人が出演する等、物販ができそうな場合はチャレンジしてみるのもいいでしょう。

種類はいろいろありますが、主に以下のようなものが考えられます。

 

・ブロマイド

・チェキ

・パンフレット

・上演台本

・公演DVD

 

他に、オリジナルTシャツや缶バッジ等を売るところもあります。

物販で注意が必要なのは、「本当に需要があるのか?」をシビアに検討することです。それぞれのグッズには当然製作原価がかかりますが、作ったはいいけれどまったく売れなかったということも起きます。

チェキは人気ですが、本体とフィルム代が結構かかります。(これを書いている2021年1月現在は、コロナ対策でこうしたキャストとの対面販売のグッズは、劇場公演ではほぼ売られていません。)ブロマイドは、前に書いたスチール写真のギャラに入りますが、決められた枚数を印刷するためのお金は別途かかります。どのキャストが売れそうかを判断して、その人の種類を増やすといった調整を行います。

売価は、ブロマイドが2枚または3枚セットで500円、チェキはソロで1,000円、ツーショットで2,000円あたりが相場です。ここから、役者へのバックと原価を引いたものが、手元に残る利益ということになります。

因みに、チェキ本体は8,000円〜9,000円台、チェキのフィルムは20枚入りで1,500〜3,000円台です。チェキの撮影にあたっては、専属のスタッフを置く必要がありますので、その人件費も計算に入れておきましょう。

上記2つとパンフレットに関しては、出演者の中に一定数のファンを持っている人が複数いないと、製作する意味はありません。一般に芝居が好きで見にきているお客様や、知り合いに誘われて仕方なく(?)といったお客様は、決して物販は買わないものです。物販に払うのは「無駄な・不必要なお金」だと思っていらっしゃるのでしょう。逆に、推しがいるお客様は、物販に積極的にお金を落とすことが、推しの収入やステイタスの向上に繋がると思っていらっしゃるので、購買意欲満々の状態で劇場にいらっしゃいます。こうした固定ファンを持たない役者ばかりの座組の場合は、物販は考えない方がいいかも知れません。

上演台本は、製本しておけば出演者やスタッフにも渡せますので、無駄にはなりませんが、作成数に気を付けましょう。

DVDは、製作費がかなりかかります。業者にお願いすると、マスターDVD1枚製作するのに12万円近くかかります(撮影・編集はほぼお任せです)。デザインされたトールケースに入れてもらって30枚製作すると、そこにさらにパッケージ製作料が1枚につき750円、デザイン料が15,000円かかりますので、税抜37,500円が追加で必要になります。DVDの価格を3,500円(税抜)にすると、45枚売れないと元が取れない計算になります。

DVDや脚本は、チェキなどと違って、一般的な演劇ファンの方も購入されるケースもありますが、やはり基本的には物販=余計な支出と考える方が多いので、元が取れるほどは売れないことが多いです。

また、DVDも脚本も、最小ロット(製作数)が決まっていますので、売れる筈がない数を作らなくてはいけなくなる危険性もあります。

そして、チェキのところでも書きましたが、物販を行うに当たっては、物販専属の制作スタッフが必要になります。その方が受付がスムーズになり、結果的に売上が上がるのですが、当然人件費も余計にかかります。

 

 

如何でしたでしょうか。

稽古場代と物販は、チケット収入が入る前にお金がかかってくるものです。特に、稽古場代はなくてはならないものですので、稽古に入る前に、予め自己資金を持っておきましょう。脚本やチラシも同様です。20〜30万で何とかなるかどうかというレベルです。

物販は、最初から無理にやる必要はないと思います。思い入れたっぷりに作ったオリジナルTシャツや缶バッチなどは、余程芝居が面白かったか、デザインが素晴らしいものでない限りはまず売れないと思って下さい。

一方で、物販はチケット収入を補う大切な収入源にもなります。メンバーによっては、積極的に展開してみて下さい。

 

3回にわたってお金の話をしてきました。

頭が痛くなってきた人もいるのではないでしょうか。

「こんなにお金はかけられない」そう思って、諦めようとしている人もいそうです。

でも、最初は「初期投資」として、とにかく公演を行うために自己資金で赤字分を補填するのはやむを得ないと考えて下さい。

公演の規模が大きくなり、チケット料金も高く設定できるようになり、ファンがたくさんいる人気者に何人も出演してもらえるようになれば、物販の売上も上がり、何とか回せるようになります。

何より、次のあなたの作品を待っていてくれる、あなた自身のファンが増えれば、チケットが売れ、モチベーションも上がってどんどん公演ができるようになります。そうなる日のために、一つ一つ着実に実績を積み上げていきましょう。

 

お金に関することは、また思い出したら挟み込んでいくことにして、次回は「企画書の書き方」のお話に入りたいと思います。

公演の予算を組む その2

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皆さんこんにちは。劇作家・演出家の息吹肇です。

前回から、公演の予算組の実際を書いています。ただ、本当にケースバイケースですので、僕が書いているのはあくまでも一例と捉えて下さい。

今回は、「スタッフさんへのギャランティ「運搬費」についてです。

 

スタッフさんとは?

一口に「スタッフさん」といっても、演劇の場合は実に様々な方が関わっています。ざっと挙げると以下のようになります。

 

・舞台監督

・舞台美術

・照明

・音響

・衣裳

・小道具

・宣伝美術

・スチール撮影

・制作

 

主にはこんなところでしょうか。

ここに、演出助手が加わることもあります。また、作品の内容によっては、ダンスの振付師、殺陣指導、歌唱指導、映像制作、ヘアメイク、そしてDVDを制作する場合は動画撮影も入ります。

これらのスタッフさんの詳しい役割についての記述は割愛します。ご了承下さい。

 

 

相場はあるのか?

スタッフさんのギャランティの相場は、あってないようなものです。それぞれのスタッフさんにそれぞれの考え方があり、仕事への誇りがあり、またキャリアもスキルも違います。拘束期間の長さや、お願いする仕事の内容によっても変動します。

ただ、どのスタッフさんに関しても、ギャラは十万円台の数字になると思っておいた方がいいでしょう。数万円で受けてくれる人は、余程のお人好しか、あなたに入れ込んでいる人、奉仕の精神が高い人でなければ、若手でまだ経験が浅い、勉強中の人くらいです。当然、スキルもそれなりのものになります。

また、ギャラの額によって、できることが違ってきます。例えば照明の場合、劇場にある照明だけではできることが限られるため、灯体を持ち込むことが結構ありますが、そうするとギャラの額が上がります。ギャラを抑えようとすれば、持ち込みはなしになり、イメージしていたような明かりが作れないことも出てきます。採算と表現のどちらに重きを置くかと、どの位予算が割けるかによって、どの程度の照明が作れるかが決まってくるのです。他のスタッフワークに関しても同じことが言えます。

ただ、小劇場でスタッフをやっている方々は、小劇場で公演を打つ人達には基本的にお金がないと分かってくれていますので、法外な値段を吹っかけてくる人はほぼいませんし、交渉には応じてくれます。

 

「舞監」と「制作」はスタッフの要

時々見られるのが、舞台監督(舞監)と制作を劇団員(役者)が兼ねている団体です。上述したスタッフのうち、照明や音響といった専門的な技能を必要とするスタッフは、普通は役者が兼ねることはできません。稀に、専門的な技術を持っている役者もいますが、通常は本番中に役者が照明や音響を操作することはできませんので、こうしたテクニカルスタッフには、専門の人を充てるのが常識です。

ところが、舞監や制作は、側から見るとそれ程専門的な知識が必要には見えません。そこで、これを出演者(役者)に兼任させ、ギャラを抑えようとするのです。しかし、それは大きな間違いです。

舞監さんはただの大道具屋さんではなく、全スタッフを統括する役目を負います。劇場に入る前も、入った後も、全てのスタッフの動きを把握し、タイムスケジュールを立て、舞台を作り上げます。そして本番中も裏に常駐し、各スタッフにキューを出し、転換を手伝ったり、アクシデントが発生した時にそれを処理するための方策を瞬間的に考えて実行したりしなければなりません。仕込みまでならまだしも、小屋入り後を考えると、舞監を役者に兼ねさせるのは酷です。役者には役者の仕事がありますので、小屋に入ったらそれに専念できないと、いい演技ができなくなります。

制作さんも同様です。制作というと、受付の人達を思い浮かべますが、あの人達の多くは「当日制作」と呼ばれる、劇場に入ってからの仕事を担う人達です。本来の制作の役目は、興行としての演劇公演を成り立たせるための、諸々の作業を行うことです。具体的には、票券(チケット)の管理や宣伝・売り方の提案、劇場内の座席の数や配置の決定、そして受付業務(チケットや物販)とお金の管理、フタッフ・キャスト用のケータリングの準備、開場中の客席内の誘導、公演終了後の決算業務等々です。今はCoRichやカルテットオンライン等の無料の票券管理システムがあり、昔よりは楽になったとは思いますが、それでも大きな座組みになれば管理は大変です。当日券の扱いや、変更等にその都度対処し、受付は滞りなく、間違いなく行わなければお客様のその公演に対しての満足度が下がってしまいます。これも、役者に兼ねさせるのは酷です。本来は本番に向けて神経を集中させたい開場時間に、受付業務に携わらなければならない負担感は想像以上です。結果、作品自体のクオリティの低下の原因になります。

逆に言えば、舞監と制作がしっかりした体制を組めれば、役者は安心して自分の仕事に専念でき、公演の成功に繋がります。

小劇場では、舞監のギャラは15万〜20万、制作は20万〜25万位が相場です。両方合わせて40万前後はかなり大きな金額で、ここをカットできれば主催者側としては嬉しいですが、公演の円滑な運営と作品のクオリティに直結するものですから、非常に大切な出費です。ここはケチらない方がいいというのが、僕の経験上強く言いたいところです。

なお、舞台監督と舞台美術を兼ねる方もいらっしゃいます。こういう方は貴重ですし、スタッフ費の節約にもなります。

 

運搬費

舞監さんや美術さんが作ったものや衣裳・小道具等を、小屋入り初日に劇場に搬入するためと、逆に最終日のバラしの後の荷返しのために車両を使います。その費用です。

舞監さんが運送業者に委託する場合もありますし、舞監さんが自ら車を手配する場合もあります。

荷物の量によって、ハイエースなのか、2トントラック(ショートかロングか)なのかを決め、運転手さんも手配します。

業者に委託した場合、大体8万弱位の金額でした。

もしあなたが搬入に使用できる車を持っていて、なおかつ運転もできれば、この部分の支出はカットできますが、それでもガソリン代や駐車場代がかかります。

 

結局赤字?

前回の劇場費のところで計算したチケット収入を思い出して下さい。キャパ60の劇場を5日間借りて5ステやり、その6割の動員だったとして、料金は3,000円の場合のチケット収入は54万前後でした。そして、劇場費を25万に設定すると、残りは29万。つまり、29万の中から、上記のスタッフさん全員のギャラと、運搬費を出さなくてはなりません。そして、支出はこれにとどまらず、稽古場代やグッズ製作費等もあります。

先程書いたように、舞監さんのギャラの相場が15万〜20万ですから、それだけでもうチケット収入を半分以上を使ってしまいます。あとは、動員をどこまで伸ばせるかと、物販でどれだけ頑張れるかにかかってきます。それでも限界がある場合は、スタッフさんのギャラや役者へのバックを減額する必要があります。

しかし、相場を大幅に下回るギャラでは、スタッフさんは普通は仕事を引き受けてはくれません。役者も同様です。まだ役者の方が受け入れてくれる可能性はありますが、モチベーションの低下は避けられません。結果、作品のクオリティの低下に繋がります。

それは、芝居を創ったあなた自身の評価が低くなることに直結します。

チケット単価を上げるのにも限界があります。

結局のところ、不足分は主催者が自腹を切るしかなくなるのです。

 

 

如何でしたでしょうか。芝居を創ろうという意志が揺らいではいませんか?

スタッフさんにお金がかかるのは、もう仕方ないことと割り切って下さい。スタッフさんは全員「プロ」です。その技術を売って生計を立てています。そして、ほぼ全ての劇場が、音響、照明といったテクニカルスタッフがプロであることを、貸す条件にしています。彼等の力を借りなければ、芝居はできません。

 

支出の費目はまだこれでは終わりません。

次回は稽古場代とグッズの製作費等についてみていきましょう。